リノベ中古マンションを購入した話

思いがけず唐突に中古マンションを購入してしまったので経緯を書き留める。

私は今の所サラリーマンをやっているが、これは決してやりたいからやっているわけではなく、ただ世間に流されてやっているだけである。20年近くやってみてわかったが、会社で働くというのがあまり好きではない。働きたくない、というか労役が嫌である。生産的な行為は好きな一方、組織に従って興味もないことをしたくはない。雨が降ったら出社したくない。

私はすでに経済的な自由を手に入れてしまったので、会社を辞めても生活に困ることはない。辞めるも辞めないも完全に自由である。しかし世間の人の多くは会社で働いているわけだから、そこからスピンアウトすることが何を意味するのかが不透明であり心配である。

世間的にただの無職という扱いになるのは嫌であるから、いろいろと画策してみる自分が面白い。例えばクレジットカードを作ったりした。黒いやつだ。世間的に無職だとカードひとつ作るのが大変だろうとの焦りからである。とりあえずサラリーマンであれば限度額300万円ほどの黒いカードなら簡単に作れる。サラリーマンはすごい。

この文脈でマンションを書いたくなった。即金ならば無職でも買えるが、それは経済的に損であるから低金利の住宅ローンを借りたい。しかしそのためには一定の定期収入があることを示す必要がある。サラリーマンならこれが容易である。住宅ローンはまさにサラリーマンのための制度であり、サラリーマンの特権といってもいい。会社を辞める前に行使しておくべきだ。

前置きが長くなったけれども、経済的、社会的、精神的な自由を得るために住宅を買わなければいけなくなったんである。これが7月頭の出来事である。

さっそく不動産サイトを眺めて目に留まった物件に内覧に行くことにした。条件は駅近で飲食店が多いこと。ここで気づいたのはこのような物件は高いことなのだが、とりあえず駅徒歩15秒の新築マンションを見に行った。すでに完成済みで、売れ残った最上階を見せてもらったのだが、これが素晴らしい。内装のグレードはかなり高く、ディスポーザーがついて24時間ゴミ出し可能である。そう、当初の条件として、常時ゴミ出しできること、ディスポーザー、敷地内に駐車場が空いていること、を挙げていたのだ。その後すっかり忘れることになるのだが。結局この物件は価格が6000万円と高価であることと、美味しい飲食店が近辺にないこと、駅の入口までは近いがホームまでは結構遠いこともあり見送った。建物自体の条件は最高だったのだが。

次に見たのは駅近のタワーマンションである。商業施設にも近く立地はかなり良い。金持ちが買ったはいいが使っていない24階の部屋を見せてもらったのだが、正直言ってイマイチだった。内装が安っぽい、窓から景色が見にくい構造、幹線道路が近くて窓開けると煩い、窓が汚れている、などと本当にイマイチだった。外観も安っぽい。何故だろうと思ったが、ここは定期借地物件であり、50年経ったら壊すんだそうだ。なるほどである。ここが5000万円ほどだっただろうか。高い高すぎる。

この辺でちょっとわかってきたのだが、マンションというのはいい条件の部屋は早く売れてしまう。売出しと同時に購入を申し込み、抽選で買うものなのだな。完成済みですぐ買える物件は相対的に劣るもののようだ。とはいっても私は無職になるためにマンションがほしいのだから、完成まで1年も待ったりするわけにもいかない。今あるものから選んで買うしか無い。周辺条件が悪いが良い建物だと6000万円で、周辺条件が良くて建物が悪いと5000万円である。厳しい戦いである。なお、一つわかったこととして、部屋の高さそのものは眺望にさほど影響しないということである。24階の部屋は確かに眺めが良いのだが、目の前がひらけていて高い建物がない12階でも眺めは同等である。だから窓側が公園、学校、神社などとなっている物件はそれだけで価値が高い。なお、幹線道路に接している建物は駄目である。高層階でもかなり煩い。空気も汚い。

というわけで対象を中古マンションに広げることにした。最初に見たのは12階で目の前が小学校のプールと運動場がある物件で3150万円。斜め前には公園とスポーツ施設がある。駅からはちょっと離れているが商業地域には近く立地はかなり良い。築年数は20年だが建物は綺麗でエントランスにはコンシェルジュが常駐する。3LDKの室内は20年使ったなりの状態で、どうしても人が住んだ跡が感じられるからリフォームはしたくなる。ちなみにキッチン・トイレ・風呂のリフォームで300万円ほどかかる。床を剥がしたり壁を壊したりまでやり始めると1000万円コースになる。かっこいい間取りで新品同様にしたいならきっと4500万円くらいになるだろう。

ここでそもそもどんな部屋が欲しいのかがよくわからなくなってきた。3LDKのマンションはファミリー向けだが、そんなに部屋はいらない。そもそも住むのにかなり便利な場所に実家があるからファミリー向けマンションなど要らない。終電を気にせず、都会的な生活ができる場所がいい。夜遅くまでやっているBARなんかがあるといい。部屋はある程度広いほうがいい。内装はオシャレなのがいい。終電をなくした女子を連れ込めるくらいがいい。

予算については5000万円は高い。買えるけれど、所詮は体裁のために買う部屋であり、そんなに大金をつぎ込むこともないだろう。4000万円ならばまあ、いいかもしれない。すると先の物件でいいじゃないかと思うのだが、夜遅くまで飲んで帰るとして、エントランスを通るときにコンシェルジュがいたらなんか嫌である。ましてや女子を連れていたらさらに嫌である。そんな夜中にコンシェルジュはいないかもしれないが、朝はいるだろう。やっぱり嫌だ。

立地の条件として、少し郊外の商業施設に近いことをどう評価するかも考えたのだが、これは要らないという結論になった。買い物に便利なのは間違いないが、敷地が広いので徒歩で行くと遠い。駅からも遠いから自動車を使う生活になるが、それなら隣りに住む必要はない。そもそもイオンに毎日行きたくない。

そうこうしている時に見つけたのが駅近のデザイナーズリノベマンション。価格は3000万円であった。マンション単体だと1700万円くらいの築38年の物件を床剥がして壁も壊して完全におしゃれな部屋に作り変えたものだ。リノベマンション購入を考えている人には注意してもらいたいのだが、このジャンルはかなり危険である。内見すると欲しくなってしまうのだ。私もひと目見て欲しくなってしまい、マンション探しを始めてから一ヶ月で購入契約してしまった。はっきり言ってこれは早まったと思う。

早まったというのは条件面をじっくり考えていなかったということなのだが、例えば当初かなり優先的な条件に考えていたはずの24時間ゴミ出し可ではない。築38年なので宅配ボックスもない。駐車場は無い。近くで借りることは可能だ。困ったのはやや天井が低いこと。私は長身なので梁の部分で頭を打ちそうになる箇所がある。玄関ドアはそこまで古くはなかったが、窓の棧は古い。断熱のために二重窓になっているのだが、開閉に二倍の手間がかかる。一番問題だったのは照明やスイッチの配置、ドアの向き、TVアンテナの配線、風呂の大きさ、冷蔵庫の置き場所など細かいところが自分好みでない部分があること。これらは一から設計したリノベーション物件の場合は自分で決められるところだから、不満を持つことなど本来あってはならない部分である。特にデザイン寄りのリノベーションの場合、普通より奇抜な方向に振ってあるので、細かいところで自分の好みとずれている可能性は高いと考えるべきだろう。教訓として記しておくが、デザイナーズリノベーション物件は完成品を買わないほうがいい。業者に頼めば同じものが作れるのだから、細かいところは自分で決めたほうがいい。

他には建物自体の問題もある。鉄骨物件なので頑丈だから耐震性の心配はない。外見は無骨であるがこれはまあいい。 気になったのは水道の水圧。水の出が弱いとシャワーが弱くなるし何をするにも時間がかかるようになるのだが、お湯が出てくるまでの時間もかかるようになるのが想定外だった。湯沸かし器からの水道管に溜まった水が出きらないとお湯は出てこないのである。これは気が付かなかった。内見の時点でお湯が出せるなら出そう。湯沸かし器の位置の都合で配管が長い場合は特に注意だ。

もう一つあった。方角についてであるが、一般には南向きがいいとされるし、南東角部屋が人気となるのだけれど、これは一考が必要である。一戸建てであれば南側の日当たりが良いことは確かに重要な要素なのだけれど、マンションについてはそう単純ではないと思う。なぜならマンションが林立する場合、南の窓から見えるのは他のマンションの北側なんである。マンションの顔は南側なので北側はいかにも裏っぽい。そして何より暗く見える。一方で北側の窓から見える他のマンションの南側は建物の顔であり、太陽を浴びて明るく輝いているから全然暗くない。だから景観という意味ではむしろ北側のほうがいいのではないかと思う。南向きは暑いし、いいことばかりではない。先入観だけで南向きを選ばないほうがいい。北東角部屋がいいと思う。ただやっぱり西向きはやめたほうがいい。

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